サカナハメグル

漁港の活気、市場の熱気。日本各地の漁港や市場を巡り、その土地の文化や漁食を紹介します。海と人々の暮らしがある風景、地域ならではの魚介類や料理。魚を通して、日本の魅力を再発見しましょう。

「伊勢湾の奇跡」と謳われる
『答志島のトロさわら』を実食!

三重県鳥羽市 和具(答志)漁港・答志漁港

近年注目を集めるブランド『答志島のトロさわら』を目当てに、答志島(とうしじま)へやってきました。三重県鳥羽市の佐田浜港から定期船で約10〜15分とアクセスも良く、和具・答志・桃取という三つの集落それぞれに漁港を持つ「漁師の島」です。

取材日:2025年11月12日

伊勢湾のミネラル豊富な海水と黒潮が出会う恵まれた海域に位置する答志島では、春のイカ、夏のタコ、秋のベラやカワハギ、冬のサワラをはじめ、通年で人気のイセエビ、アオサ海苔など、四季折々の海の幸が水揚げされます。

▲活魚が水揚げされる答志漁港

漢字で魚編に春と書くサワラ(鰆)といえば「春告魚(はるつげうお」として知られますが、答志島のサワラは 秋〜冬こそ最盛期。豊かな漁場で育つイワシなどの小魚をたっぷり捕食し、大きく育った個体は身にも脂を蓄え、まるでトロのような旨さに達するため『トロさわら』と呼ばれています。

この「脂の乗り」を科学的に証明し、差別化してブランド化しようと誕生したのが、2018年10月にスタートした 『答志島のトロさわら』です。

島のサワラ漁は「流し網漁」や「曳き釣り漁」が主流ですが、ブランド認定されるのは 一本釣りのサワラのみ。釣り上げた瞬間に活け締めされ、その鮮度や扱いも厳しく管理されています。

認定基準は、重さ 2.1〜4.0kg、脂肪含有量 10%以上、当日漁獲分のみで傷・変形・変色なし…と驚くほど厳格。これらすべてを満たした「選ばれし個体」だけが『答志島のトロさわら』というブランド名を名乗ることができるのです。

ブランドに認定された個体は、尾のくびれにロゴが入った赤紫のタグがくくりつけられます。タグの裏には漁獲した漁船名も明記されています。もし、料理店や市場で魚をさばいた際に「身割れ」(身の繊維がほぐれて割ける現象。船上で魚を落とした際などに発生する場合があります)が見つかった場合に、漁師まで遡って確認できるようになっています。これは「最後まで責任を持ちたい」という漁師たちの強い思いから生まれた仕組みです。

ブランド開始から8シーズン目を迎え、全国的な人気も高まってきました。近年はサワラそのものの不漁も重なって、地元でもなかなか手に入らないほどの希少な高級魚になっているとのことです。
そんな中、鳥羽へ戻る定期船を降りてすぐの人気店『天びん屋本店』で、答志島のトロさわら 本日入荷』の文字を見つけました。近年はこれを目当てに来店する観光客も増えているそうです。

▲地元の方に紹介してもらった『浜の味処 天びん屋本店』。向かい側には姉妹店の『網焼き天びん屋』もある。
▲『答志島のトロさわら』。

今朝獲れて先ほど入札されたばかりの『答志島のトロさわら』を、刺身と炙りでいただきました。
口に入れた瞬間、思わず目を閉じるほどの衝撃が走ります。
舌の上で溶けるようにほどけ、澄んだ甘みとキレのある旨味がふわりと広がります。脂の重たさは一切なく、まさに「上質なトロの軽やか版」といった感じ。炙りにすれば香ばしさが加わり、旨味がさらにくっきりと引き立ちます。「伊勢湾の奇跡」と称されるのもおおいに納得がいきました。

▲「脂肪含有量10%以上」という驚異的な脂の乗り。

さらにこの日はタイ、ヒラメ、アジなど、答志島で揚がったばかりの活魚の刺身も堪能しました。どれも身の張りが素晴らしく、噛むほどに旨みが広がります。魚種ごとに香りや質感がまったく違って食べ比べも楽しい。伊勢湾グルメのポテンシャルの高さを、あらためて実感しました。

秋冬の味覚、旬のご馳走を追って、三重県のおいしい漁港巡り旅は、まだまだ続きます。

▲質の高さとバリエーションの豊かさに脱帽の伊勢湾グルメ


著者プロフィール

塩坂 佳子(しおさか よしこ)フリーライター

大阪府出身。東京でフリーのライター兼編集者として長年、雑誌や書籍制作に携わる。東日本大震災後はボランティア活動で東北に通い、2015年宮城県石巻市に移住。執筆活動を続けながら、魚の街から日本の魚食文化を推進したいと『石巻さかな女子部』を立ち上げた。以後は土産物の企画・開発やコミュニティづくりなど、地方創生活動にも従事している。


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