漁港の活気、市場の熱気。日本各地の漁港や市場を巡り、その土地の文化や漁食を紹介します。海と人々の暮らしがある風景、地域ならではの魚介類や料理。魚を通して、日本の魅力を再発見しましょう。
漁業×観光で発展する南知多
名物料理の進化にも期待!
愛知県南知多町 師崎漁港朝市と日間賀島


JR名古屋駅から車でおよそ1時間。伊勢湾、三河湾、渥美外海に囲まれた知多半島の最南端に位置する師崎漁港では、古くから沿岸漁業が行われてきました。現在も船びき網漁や小型底びき網漁、海苔養殖などが盛んで、春のコウナゴ(イカナゴ)やシラス、夏の貝類、イセエビ、ハモ、冬のヒラメやトラフグなど、季節ごとに豊かな水産物が水揚げされています。
この地域の漁業と人々の暮らしを結びつける場として誕生したのが「師崎漁港朝市」です。2005年、中部国際空港(セントレア)の開港に合わせてオープンし、地元住民の台所であると共に、観光客が南知多の漁業文化に触れられる場として親しまれてきました。
朝市には、近海で獲れた新鮮な魚介類や干物、シラス干し、海苔などの加工品に加え、青果や「ふところ餅(地元の郷土菓子)」がずらりと並びます。漁師や地元の人々が自ら販売しているから、店頭での素朴で温かなふれあいも、人々を引き付ける魅力のひとつになっています。
高齢化や社会状況の変化により、出店数はオープン当初の約半数となってしまいましたが、それでも12店舗が元気に営業。週に一度の定休日を除き、毎朝8時には市が開かれます。






隣接する師崎漁港には、早朝から正午ごろまで日によってさまざまな漁船が入港。タイミングが合えば朝市で買い物中にも、迫力ある水揚げの光景を眺めることができます。
そして、朝市を満喫した後は観光船で約10分。三河湾に浮かぶ日間賀島を訪れました。
周囲はおよそ5.5km。全域が三河湾国定公園に指定されていて、風光明媚な環境の中で漁業と観光業が密接に連携、発展してきた離島です。名物はタコとフグ(冬季)で、特にタコは島の象徴的存在。島内にはタコをモチーフにしたモニュメントが点在し、その親しみ深さを物語っています。

また、夏には美しいビーチが開放され、海水浴を楽しむ人々で大にぎわい。昔ながらの宿や土産物店が立ち並ぶ街並みに加え、カジュアルな飲食店やカフェも増え、幅広い世代の観光客が島を訪れるようになっています。
そこでランチには、若者に人気と聞いた『島バル daitome』に入店。海を望むテラス席に腰を下ろし、イチ推しメニューの「タコとシラスのアヒージョ」を注文してみました。
旬のシラスがこんもりと盛られ、熱々のオイルの中にはぶつ切りのタコや車エビまで入っています。香ばしいニンニクの香りとともに、魚介のうま味がオイルに溶け込み、バゲットにのせていただくと、豊かな味わいが口いっぱいに広がりました。オリーブオイルよりも軽やかな米油が使われているため魚介のうま味が引き立ち、次のひと切れを探す手が止まりません。

さらにテイクアウトでは、タコ飯のおにぎり、タコ唐串、平貝のフライもオーダー。タコは揚げても柔らかく、ジューシーでうま味が凝縮。初めて食した平貝は、肉厚で歯ごたえがあり、上品な甘みが感じられました。

島の名物を活かしたメニューはどれも個性豊かで、漁業と観光が結びついた食文化の広がりを実感。伝統的な漁業を大切にしながら、新しい楽しみ方を柔軟に取り入れることで、魚食文化は、今も静かに進化を続けています。